血液検査
血液学検査(血球検査)
●血液学検査(血球検査) Complete blood count
血球とは、貧血にかかわる赤血球系検査(ヘモグロビン濃度、赤血球数、ヘマトクリット値など)、免疫や感染症・炎症にかかわる白血球数、出血・止血にかかわる血小板数の3種類に大別されます。
●検査で見つかる病気
赤血球系検査ではHb(ヘモグロビン濃度)が最も重要な指標となり、Hb低値では貧血、Hb高値では多血症が疑われます。白血球数の高度の減少や増加は白血病などのいわゆる血液がん(造血器腫瘍)が疑われます。血小板数の高度の減少は特発性血小板減少性紫斑病や薬剤による副作用など、高度の増加は造血器腫瘍が疑われます。
脂質検査
●脂質検査 Lipid profile
総コレステロール値、LDL(悪玉)コレステロール値、HDL(善玉)コレステロール値、トリグリセライド値(TG;中性脂肪)などを測定する検査です。
●検査で見つかる病気
LDLコレステロールは血中コレステロールを肝臓から各組織に輸送する働きを担うタンパク質で、過剰になると動脈壁に蓄積し、動脈硬化の原因となります。逆に、HDLコレステロールは各組織の過剰なコレステロールを肝臓へ運ぶタンパク質であり、動脈硬化に対して抑制的に働くため、不足すると動脈硬化の原因となります。中性脂肪は体内で脂肪酸をエネルギーとして供給する役割を持ちますが、過剰な中性脂肪は肝臓や脂肪細胞に蓄積され、脂肪肝・皮下脂肪増加を引き起こしたり、動脈硬化の原因となります。
糖代謝
●糖代謝 Glucose metabolism
血中の糖処理能力を調べる検査です。血中の糖を各臓器に取り込むためにインスリンホルモンが必要ですが、体内のインスリンが不足したり、インスリンが作用しにくい状態になった病気が糖尿病です。人間ドックや健康診断では、10時間以上絶食してから測定する空腹時血糖と、過去1-2か月の平均血糖値を表わすHbA1cを測定します。
●検査で見つかる病気
どちらか一方が高値であれば「糖尿病型」となり、追加の検査や経過観察が必要となります。両方とも高値であれば「糖尿病」の診断となり、薬物治療や運動療法が必要となります。初期には症状がありませんが、糖尿病が進行したり放置すると、網膜症・腎症・神経症などの微小血管病変により、失明したり血液透析が必要になります。また、心筋梗塞・脳梗塞などの大血管病変により命にかかわるリスクが高くなります。傷も治りにくくなり、糖尿病性壊疽が起こることもあります。
肝・胆道系検査
●肝・胆道系検査 Liver and biliary function
複数の項目により、肝細胞の障害(炎症や壊死)、肝臓での合成機能、解毒・排泄機能などを評価します。
●検査で見つかる病気
AST(GOT)やALT(GPT)はトランスアミナーゼと呼ばれ、肝内の化学反応を触媒する酵素であり、肝細胞に障害が起こると血中に放出されて数値が上昇します。ウイルス性慢性肝炎や肥満型の脂肪肝ではALT優位に上昇することが多く、肝硬変や急性肝炎、アルコール性肝炎などではAST優位に上昇することが多いです。γ-GTPはアルコール摂取や薬剤性障害でも上昇しますが、ALPやビリルビンと合わせて胆道系酵素と呼ばれ、胆石や胆管癌・膵癌などにより胆汁の通り道が閉塞した場合にも上昇します。総蛋白やアルブミン値は栄養状態や免疫と関わっており、アルブミン低値では栄養状態の悪化や炎症などが疑われ、総蛋白の異常高値では血液がん(造血器腫瘍)が疑われます。
膵機能
●膵機能 Pancreatic function
膵臓は消化酵素を分泌する外分泌機能と、ホルモンを分泌する内分泌機能を持っています。人間ドックや健康診断では、主に外分泌機能を反映する血清アミラーゼ値を測定します。
●検査で見つかる病気
アミラーゼ値が高値の場合、膵炎や膵癌などの疾患が疑われますが、唾液腺からも分泌されるため、唾液腺疾患による場合もあります。精密検査で確認が必要となります。
腎機能
●腎機能 Kidney function
クレアチニン値とそれから算出されるeGFR(推算糸球体濾過量)、そして尿素窒素値を測定します。クレアチニンは血液中の老廃物であり、通常であればそのほとんどが腎臓の糸球体で濾過されて尿中に排出されますが、腎機能が低下すると、排出されずに血液中に蓄積されます。
●検査で見つかる病気
慢性腎臓病を早期に診断することが可能です。日本における20歳以上の慢性腎臓病患者は、成人人口の13%で2561万人と推計されています。その診断には尿検査異常とeGFRが用いられますが、早期の場合の多くは尿検査で異常を認めません。慢性腎臓病は透析予備軍であり、早期診断で透析導入への進展を予防することが可能です。
尿酸値
●尿酸値 Uric acid
尿酸はプリン体が分解されて生じる代謝物質です。プリン体はビールなどの酒類や食肉を中心としたさまざまな食品に含まれ、人間の細胞にある核の中にもプリン体が存在します。
●検査で見つかる病気
高尿酸血症は痛風や尿路結石の危険因子となります。また、高血圧や慢性腎臓病との関連も示唆されています。高尿酸血症を認めた場合は、食事や運動などの生活習慣の改善が必要となりますし、痛風発作を認めた場合や9.0 mg/dL以上の場合には薬物治療が必要となります。重度の低尿酸血症の場合には、遺伝疾患の可能性があります。